日本精神保健看護学会 会員各位
理事長 安保寛明
(山形県立保健医療大学)
日本精神保健看護学会の理事長としての任期もあと数か月を残すところとなりました。皆さんとは神戸で開催される第33 回学術集会の時にお会いできることを心から楽しみにしています。さて、今日は2022年に発出した2つの理事長声明のその後のことを報告します。
1)ウクライナ危機における人道的支援への声明 に関して
昨年2 月にはじまったウクライナ紛争は長期化する可能性が高くなってきています。私は「ウクライナ危機における人道的支援への声明(2022 年3 月11 日発出)」を通じて人道的立場からの支援を目指す旨を表明しました。その後、ウクライナから欧州などの世界各地に避難している避難者への支援に役立てるために、東日本大震災の際の避難者の健康面の影響に関するレビュー論文を整理しました。その知見を、2022 年10 月13 -15 日に開催された東南欧州精神保健学会において、以下のタイトルで講演しました。
Keynote lecture: Physical and Mental Effects and Support for People Deprived of Their Homes: Findings from Ten Years after the Nuclear Power Plant Accident in Japan
上記のプレゼンテーションでは、大規模なコホート調査の結果を中心にプレゼンテーションし、肝腎機能障害のリスクやK- 6 得点の長期推移、保護要因としての社会的交流を紹介しました。また、福島などの被災地で行われたこころのケアセンターなどによるアウトリーチ支援や本学会の取り組み(精神科病院で働く人のためのマニュアル、遠隔支援ガイドライン、災害対策委員会の存在)をプレゼンテーションに含めました。なお、この講演に関する貢献をしてくれたのは、若手の理事・代議員から以下の4 名でした。
寺岡征太郎、矢山壮(以上理事)、千葉理恵、田中浩二(以上代議員)
2023 年3 月にはウクライナの隣国であるルーマニアに赴き、同様の講演を現地の医学生、若手医師、看護学生などに行う予定です。
2)神出病院における虐待事件への声明に関連して
10 月10 日までプロジェクトチームのメンバーを募集しまして、本学会の会員36 名が参加してくれています。参加メンバーの意見を集約するなどしていて、できるだけ私の任期中に神出病院事件を念頭に置いた報告・提案を発行したいと考えています。また、第33 回学術集会でもシンポジウムやワークショップで精神医療の場における権利擁護に関することが扱われる予定です。ぜひ会員の皆さんにも、神戸で行われる第33 回学術集会へのご参加とご関心を頂きますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
3)国民健康づくり運動に関する学会の関与
厚生労働省が健康増進事業の指針としていく国民健康づくり運動に関する次の4 年間の計画策定に向けた議論が開始されています。日本精神保健看護学会は、この国民健康づくり運動に関する計画作成に向けた専門委員会にメンタルヘルスに関連する目標や指針の強化が必要という意見表明を行いました。
この続きは、第33 回学術集会で紹介したいと思います。ぜひ皆様、学術集会へのエントリーをお願いします。