
このたび、第7期日本精神保健看護学会理事長を拝命いたしました、大阪大学の武用(ぶよう)でございます。会員の皆様におかれましては、平素より本学会の活動にご理解とご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。
本学会は1991年の設立以来、歴代の理事長をはじめ、理事・代議員の皆様の多大なご尽力のもと、精神保健看護学の学術的発展と実践的貢献を重ねてまいりました。その歩みの中で、精神保健看護が社会に果たす役割の重要性が着実に広まり、現在では会員数も増加し、国際的な連携や情報発信の必要性もますます高まっております。また本学会の目的は、精神保健看護学の発展を目指すのみならず、その実践を通じて人々の精神の健康と福祉に貢献することであります。近年、社会の不確実性や人間関係の希薄化などを背景に、メンタルヘルスの重要性が広く認識されるようになりました。しかしながら、依然として支援が十分に届いていない方々も多く存在し、私たち精神保健看護職の役割はより一層問われています。
こうした状況の中で、本学会が果たすべき役割の一つは、精神保健看護の専門性に立脚し、支援を必要とする人々に適切な看護が提供される社会の実現に向けて、継続的に議論を深め、実行に移す体制を整えることです。特に、精神科医療における人権尊重と虐待防止の取り組みは、専門職としての基本的責務であり、日本精神科看護協会や日本看護協会と共同で公表した声明においても、その重要性が強調されています。学会としても引き続き、この課題に真摯に向き合ってまいります。
また、精神保健領域における高度実践看護師の活動推進も、重要なテーマの一つです。精神保健課題が多様化・複雑化する中で、専門性を備えた看護職の果たす役割はますます広がっております。今後は、教育や制度面での支援を含め、実践の場の拡充と社会的認知の向上を図ることが求められます。精神保健看護における高度実践の価値を可視化し、政策提言や人材育成においても連携を深めていく所存です。
本学会は、会員相互の交流や実践知の共有を通じて、より風通しのよい、誰もが参画しやすい学会運営をめざしております。専門分野や立場を超えた協働のもと、新たな価値を創出し、精神保健看護の未来を皆様と共に切り拓いてまいりたいと存じます。
今後とも、変わらぬご支援とご助言を賜りますようお願い申し上げ、理事長就任のご挨拶とさせていただきます。
2025年5月
一般社団法人日本精神保健看護学会
理事長 武用百子