当学会は精神保健従事者団体懇談会(精従懇)の賛同団体です。精従懇では精神保健・医療・福祉の従事者団体が、職種、職域、専門性の違いを超えて情報交換や討論を行なっており、学術連携委員も2か月ごとに開催される懇談会に参加しております。
精従懇から2022 年12 月3 日に声明が発出されました。一方、12 月9 日に参議院本会議で、精神保健福祉法の改正案が可決成立しました。これは障害者総合支援法、難病法、障害者雇用促進法、児童福祉法の5 法を一括審議するいわゆる束ね法案で、充分な議論が尽くされないことが懸念されていました。そこで精住懇は、精神保健福祉法の改正について、医療保護入院の見直し、精神障害者の権利擁護等の慎重な議論を求めるため、参議院の本会議および厚生労働委員会の日程にあわせて発出したわけです。
関連する動きを振り返ってみます。2021年 10 月から 2022 年 6 月まで「 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」が開かれ、精神障害者の権利擁護、虐待防止の取り組みなどが検討されました。隔離・身体的拘束の議論もありましたが、最終的に「不適切な隔離・身体的拘束をゼロとする取組」の、不適切の内容が明らかにされないままでした。また、一度は医療保護入院の廃止の方向性が打ち出されましたが、その後の進展がみられませんでした。8 月には国連・障害者権利委員会における日本審査が実施され、9 月に総括所見が示されました。ここでは、心理社会的障害(精神障害)のある人の強制的な扱いを正当化する不当な法的規定の全面的な廃止が勧告されています。今般の法改正では、家族の意思表示が明らかでない場合にも市町村長同意が可能になるなど医療保護入院が増加する懸念もあり、家族の負担加重と患者の権利擁護に言及した附帯決議がつきました。
このような中、精神保健看護に携わる私たちにも、今まさに課題解決に向けた真摯な論議が求められているといえるでしょう。会員の皆様でいろいろな意見交換ができるとよいですね。